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「格ゲー、詳しいんですね。俺のこと、さくらさんに教えたのも三井さんだって聞きました」
さも余計なことをするな、と言わんばかりの言い方に、司は可笑しくなる。
「悪かったな。自分で言いたかった? 有名プロゲーマーだって」
「いえ、別に。それに俺、有名なんかじゃないですから」
その表情はいたってクールで固い。さきほど、さくらと一緒にいたときの笑顔とは雲泥の差だ。
「謙遜するんだな。少なくとも俺はARATAのプレイは最初から注目していたし、まわりの評価も知っているつもりだぜ」
「……そうですか。ありがとうございます」
大してありがたくもなさそうにいう。
(こいつ、ホント見た目とちがってかわいくないんだよな。ARATAらしいといえばらしいけど)
司は心のなかで苦笑して、話題を変える。
「で。わざわざARATAくんが、さくらとつき合ってるアピールを俺にしてくるってことは、さくらに手をだすなと、そういいたいわけ?」
新太は顔をあげるとはじめて、口元を緩めてみせた。ARATAが見た目のかわいさ以上に、クールだといわれる所以である温度の低い笑みだ。
「そうしてもらえると、有難いですね」
新太のふてぶてしい表情と言葉に、司もセーブしていた感情が、さすがに泡立ってくる。
「じゃ、言わせてもらうけどさ」
司は一呼吸おいて、口を開いた。
「今ってさ、トッププレイヤーにのぼりつめるために一番大事なときだよな。あとすこしで長年の王者神谷大介を引きずり落とすことができる。そんな大事なときにお前、さくらとつきあう時間なんてあんの?」
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