第九章 牽制

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 一瞬新太が息を呑んだのがわかった。多少なりともダメージを与えた感触を得て、司は溜飲を下げる。新太はしばらく司を見つめたあと、一瞬だけ瞳を伏せて、すぐに何かを決したように顔をあげた。 「時間はどうにでもできます。だから……」 「だから?」  新太が睨むようにして司をみつめる。 「どっちもとります。トップもさくらさんも」  淡々と、けれど熱を帯びた瞳をして言い切った。司は表情を取り繕うことも忘れ、まじまじと新太を見つめる。  新太のいうことが、けっして容易い事ではないのは、素人なりにもわかっている。けれど新太がいうとなぜか、リアリティーをもって響いてくる。そんな彼のオーラを振り払うように、あえて冷笑を浮かべてみせる。   「すげえ自信だな」 「自信があるとかないとか関係ないんです。やるしかないんで」  真っ直ぐな瞳をしてそう言う新太の表情に、相当の覚悟があることはみてとれた。生半可な気持ちでさくらと付き合い始めたのではないことが、はっきりと伝わってくる。  短期間でさくらの心を掴む何かを持っている男。やっぱり腹が立つし、嫉妬もする。それでもそんな感情を表だっては意地でもみせられない。 「まずはお手並み拝見、だな」  司の言葉に新太が片方の眉をあげた。その刹那、耳元に新太にしか聞こえない小声で囁く。 「但し。おまえがさくらを泣かせたら、横からかっさらう」  嫉妬と意地と切なさ。それらをすべて詰め込んだ本音を吐き出す。その言葉に新太は大きく瞳を見開く。それからぎゅっと目を細め睨むと、泣かせたりなんてしませんから、とぶっきらぼうな調子でこたえてきた。
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