第九章 牽制

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 そんな新太に、司はシニカルな笑みを向け視線を外すと、いこうぜと朋美に声をかけて歩きはじめた。    階段を昇りはじめて新太がみえなくなると、朋美が後ろから声をかけてきた。 「びっくりした。さくらの彼氏、心臓強いね。明らかに年下で、あんなかわいい顔しているのに、正面切って三井を牽制しにくるなんて。しかも妙にクールで堂々としているし。あの子一体何者?」  何者、という言い方に時代劇かよ、と思わず笑ってしまう。 「プロゲーマーだからな。気が強くなきゃやってられないだろ」 「ふーん。もっと愛想がよければアイドルでもいけそうだけどね。あのさくらが陥落したのが美少年プロゲーマーなんて、ちょっと想像の斜め上展開だったけど……でもいいの? あの子とさくらがつきあって」  朋美が気遣うように見上げてくるから、司は苦笑するしかない。 「さくらにあんな笑顔をみせられちゃ、今はお手上げだよ。ただ、あいつらがこれからどうなるかなんて、わかんないからな」 「どうしてそう思うの?」 「まあ半分負け惜しみだけど」  そういって司はさきほどのやりとりを思い出す。 「さっき本人にもいったけど、あいつは今、トップとるのに一番大事な時期なんだよ。本来なら女とつき合ってる場合じゃない。根っからゲーマー気質のARATAは、それに耐えきれなくなって、さくらの手を放すんじゃないかっていう単純かつ希望的観測」 「へえ。三井、意外と冷静に分析してる」  朋美が感心したようにそういうと、まさか、と司は首をふる。 「全然冷静じゃねえわ。あんなラブラブシーンみせつけられたら、さすがに萎える。それに、あいつなら本当にさくらも手放さないで、トップを獲っちまう可能性も、なくはないからな」
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