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そんな新太に、司はシニカルな笑みを向け視線を外すと、いこうぜと朋美に声をかけて歩きはじめた。
階段を昇りはじめて新太がみえなくなると、朋美が後ろから声をかけてきた。
「びっくりした。さくらの彼氏、心臓強いね。明らかに年下で、あんなかわいい顔しているのに、正面切って三井を牽制しにくるなんて。しかも妙にクールで堂々としているし。あの子一体何者?」
何者、という言い方に時代劇かよ、と思わず笑ってしまう。
「プロゲーマーだからな。気が強くなきゃやってられないだろ」
「ふーん。もっと愛想がよければアイドルでもいけそうだけどね。あのさくらが陥落したのが美少年プロゲーマーなんて、ちょっと想像の斜め上展開だったけど……でもいいの? あの子とさくらがつきあって」
朋美が気遣うように見上げてくるから、司は苦笑するしかない。
「さくらにあんな笑顔をみせられちゃ、今はお手上げだよ。ただ、あいつらがこれからどうなるかなんて、わかんないからな」
「どうしてそう思うの?」
「まあ半分負け惜しみだけど」
そういって司はさきほどのやりとりを思い出す。
「さっき本人にもいったけど、あいつは今、トップとるのに一番大事な時期なんだよ。本来なら女とつき合ってる場合じゃない。根っからゲーマー気質のARATAは、それに耐えきれなくなって、さくらの手を放すんじゃないかっていう単純かつ希望的観測」
「へえ。三井、意外と冷静に分析してる」
朋美が感心したようにそういうと、まさか、と司は首をふる。
「全然冷静じゃねえわ。あんなラブラブシーンみせつけられたら、さすがに萎える。それに、あいつなら本当にさくらも手放さないで、トップを獲っちまう可能性も、なくはないからな」
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