第十章 もっと知りたい

3/10
前へ
/253ページ
次へ
 だからといってさくらが女っぽくない、なんてことは全然ない。むしろかなり色っぽい。ふとした瞬間にみせる、新太への好意を秘めた艶やかな表情。ゆっくりと赤くなる頬、そっと見つめてくる瞳。髪の毛を結い上げたときにみえるほっそりした白いうなじ。  決して媚びているわけではない。素のままなのに、自然に溢れてくるその色気にいつも息を呑んでしまう。強く惹き付けられて余計に触れたくなってしまう。少しでも気のない素振りをされると強引にでも抱き締めたくなる。俺だけをみて、といいたくなる。  さくらの魅力はわかっている。だからこそ、他の男も惹き付けられてしまうことも、容易に想像できてしまう。 (あの三井って奴みたいに)    司との会話を思いだす。特に、最後に耳元で囁かれた言葉を思いだすと、腹わたが煮えくり返る思いだ。飄々として余裕の笑みを浮かべていた司は、最後にいきなり爆弾を落としてきた。 『但し。おまえがさくらを泣かせたら、横からかっさらう』  そう囁いた司の言葉は、本気ゆえの鋭さがあって、容赦なく新太の心に突き刺さった。あのときの挑むような司の目。まだ諦めない。あの目はそう言っていた。 (あいつ、マジむかつく)  ゼミが始まるのは三年生になってからだから、詳しいことを新太はしらない。けれど普通のクラスメイトよりも一緒に過ごす時間は長いし、コミュニケーションも濃いと聞く。多忙でなかなか時間が取れない新太よりも、同じゼミ仲間として、司のほうがさくらと過ごす時間はよっぽど多そうだ。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加