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「じゃあ、がんばって作らないとね。新太くん、アレルギーはなくて、キライなものはニンジン、で合ってる?」
「合っています」
ニンジンがキライなんて改めて確認されると、子供っぽくて、新太は気恥ずかしくなる。
けれどさくらは気にする様子もなく、黒いゴムをとりだして、髪の毛をきゅっと後ろにしばり、エプロンをつけた。まるで新婚の奥さんみたいに。そう思ったら目が離せなくなった。
(まじで萌える……)
ぼおっとその姿を眺めていると、さくらが苦笑した。
「新太くんはゲームのトレーニングがあるでしょ?」
「いや、俺、手伝いますよ。包丁とかうまく使えないから、皿を洗うくらいだけど」
「ううん。私も初心者だから、手伝ってもらうと逆に段取りが飛びそう。もっと馴れてきたらお願いするから大丈夫」
これからも作ってくれそうなさくらの口ぶりに、新太の口元も緩んでしまう。
「じゃあ、お願いしてもいいですか。俺、リビングにいますから、何か手伝うことがあったら呼んでください」
「わかった。ちょっと時間かかるかもしれないけど」
「いくらでも待ちます」
本気でそういったら、さくらがふわりと微笑んだ。
リビングにいき、モニターやゲーム機器類に電源をいれる。ウイーンとうなり声をあげてそれらが起動開始する。いすにすわって、ヘッドフォンを耳にあて、コントローラーに手を置く。いつも通りのルーティン。それなのに、甘いざわめきがとまらなくて、なかなか集中できない。
(やるときは、本気でやらないと。集中しろ)
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