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ヘッドフォンを外し、さくらを見上げて照れ笑いする。ゲームに集中しているときは普段は一人だから、必要以上に驚いてしまった。
「驚かせてごめんね。御飯ができたの。すごく集中していたから、終わるのを待とうかなって思ったんだけど、冷めちゃうなって思って」
さくらが申し訳なさそうにいう。
「いや、俺のほうこそ、こっちに没頭しちゃってすいません」
さくらはふるふると首をふって微笑んだあと、ほんの少し困った表情で呟いた。
「……ゲームをやっているときの新太くんって、顔つきがいつもと違うね」
「え、そうですか? どんなふうに?」
びっくりして新太がそう訊ねると、なんというか、と前置きしあと、少し考えるように間を置いてから、小さな声で呟いた。
「……ちょっと知らない男の人みたい」
新太は驚いてしまう。自分では全く意識していなかった。
「本当に? 俺、そんな怖い顔をしてプレイしてんのかな」
前髪をかきあげてうーんと唸ると、さくらがふわりと微笑む。
「怖いっていうより……」
さくらは照れたように目元をほんのり紅く染めて囁いた。
「すごくクールな感じで、ドキドキする」
予想外のことを言われ口をひらいたまま、さくらをじっとみつめてしまう。いつもは凜とした瞳が、甘く潤んでいる。衝動的に手を伸ばす。普段は髪の毛で隠れているはずの首筋。そこに手のひらをあててゆっくり引き寄せる。
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