第十章 もっと知りたい

8/10
前へ
/253ページ
次へ
 さくらも抵抗することなく新太に身を任せてくるのを感じて、心臓の鼓動がいよいよ高まる。  指先が震えてしまっている。さくらに伝わってしまうのが、かなり恥ずかしい。そう思いながらも、熱を帯びたさくらの息遣いを感じられるほど近づいて、その瞳を覗き込む。  やっぱり艷やかに潤んでいて、新太をまっすぐにみつめている。それは新太のなかにあるひりつくような衝動を、さらに加速させてしまう。  ほとんど唇が触れそうな距離。掠れた声でささやいた。 「……俺のほうがいつもドキドキしてます。多分、さくらさんよりずっと」  ゆっくり唇を重ね合わせる。さくらの唇が一瞬、緊張するように震えた。けれどすぐに、新太の動きに応えてくれる。一気に興奮が高まる。胸が痛くなるほどの柔らかな感触。甘さ。    初めてキスをしたときは熱があったから、ヴェールがかかっているような印象だった。でも今は違う。あのときよりずっとリアルな感触、熱、甘さが伝わってきて、もっと心をかき乱す。心臓が壊れそうなくらい高鳴って苦しい。必死で押さえつけている衝動を、あっけなく解き放ってしまいそうだ。    まだ僅かに残っている理性を総動員して、激しく貪ったりしないように、上唇を食む。やっぱりそれも甘くて目眩がしそうになる。  さくらの唇が僅かに開く。すぐにそっと舌を差し込む。触れた舌の先端が熱い。それを感じた瞬間、理性の糸がギリギリと限界まで張りつめ、ほとんどきれそうになるのを感じた。部屋には二人だけ。 (もっと知りたい。さくらさんの、すべて)
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加