第十一章 好きだから

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「さくらさん、まじでハンバーグ美味しい。この部屋で、こんな美味しいものを食べられるなんて感動!」 「本当? そんなに喜んでもらえるなんて、作った甲斐があったな」  新太の嬉しそうな顔をみて、さくらの口元もほころんだ。新太は実家からローテーブルまで持ち込んでいたから、そのうえに作った料理を並べてふたりで食べていた。  メインはリクエストどおりのハンバーグ。一人暮らし用のキッチンが小さくて作りづらかったけれど、なんとか仕上げた。  焦げ目をつけたあと、中まで火をしっかり通した。残った肉汁をそのまま使って、ワイン、ケチャップ、バターや砂糖などで煮詰めてソースに。つけあわせは人参のグラッセにしたかったけど、新太のためにマッシュポテトにして、そのうえにみじん切りしたパセリを散らした。  アボガドとトマトを切ってレモンと塩ベースのドレッシングにあえて、上に生ハムを乗せたサラダ。家で作って冷やしておいたビシソワーズ。美味しいパン屋さんで買ってきたカリカリのバケット。  料理初心者のさくらとしては、ネットでレシピサイトをチェックしたり、母親にリサーチしたりとかなり気合をいれて頑張ったから、新太が美味しそうに、それらをすごい勢いで食べていく様子が何よりのご褒美だった。くすぐったいような喜びで一杯になる。  じっとみつめているさくらに、新太は照れ臭そうに微笑みかえす。さきほどまで、怖いくらい真剣な、男の顔をしてさくらを抱き締めていたのに。目の前でみせてくれる笑顔は無邪気そのもの。そのギャップにドキドキしてしまう。
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