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「新太、なにぼーっとしてんだよ。待ち合わせしたエレベーターのとこに、待っててもこねえし」
誰もいなくなった教室。そこで立ち尽くしていた新太はその声にハッとした。振り返ると付属小学校から一緒の幼馴染、ケンだった。ケンとは学部が違うから、基本取る授業がかぶることはない。
一体どれくらい、ぼおっとしていたのだろう。頬をぺちりと軽く叩かれた。
「徹夜したな? ゲームのやり過ぎでまた、意識飛んだんだろ?」
しょうがないなという感じで笑うケンの手を、新太は軽く払いのける。
「うっせえな。……まあ、多少それもあるけど……それよりさっきさ」
「うん?」
ケンがスマホに視線を落として、画面を確認している横顔をみながら呟く。
「俺、一目惚れしたかもしんない」
「ふーん」
ケンが適当な相槌を打ったあと、がばっと顔をあげた。
「は?! なんだって? 一目惚れ? 新太が? マジで?」
素っ頓狂なその声に新太はつい笑ってしまう。
「そこまで驚く?」
確かにケンが驚くのもわかる。なにせ新太本人が一番に驚いているのだから。
「そりゃ新太から一目惚れって言葉を聞くなんて想像できるわけないじゃん。それ、リアルな女なの? 妄想じゃなくて?」
からかうようにそういってくるケンに口を尖らせ文句を言う。
「リアルにきまってんだろ。さっき教室で隣に座っていたんだから」
「へー。ビックリ。いくら告られても無反応だった新太が一目惚れ、ねえ」
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