第十一章 好きだから

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 さくらの体がピクリ、と震えた。以前付き合っていた相手にも素っ気ないとよくいわれた事を思い出す。  けれど彼らの苦笑は気にも留めず、さらりとごめんねと謝って終わらせていた。この性格は変えられないのに、なんて心のなかでため息をついていたくらいだ。  けれど今、新太に寂しげにそう言われた瞬間、想像もしていなかったおかしなスイッチが突然はいった。反射的に涙が溢れてきたのだ。 「えっ、えっ! さ、さ、さくらさん、どうしました? 俺、酷いこといっちゃった? ごめんなさい!」  新太の慌てっぷりがおかしくて、泣き笑いみたいになってしまう。指先で涙を押さえて、首をふる。こんなことくらいで泣くなんてどうかしている。ちゃんと言葉しないと、さらに涙が溢れてしまいそうであわてて口を開く。 「……新太くんとしばらく会えないなんて凄く寂しくて、でも我慢しなきゃって必死に耐えていたのに、やっぱりあっさりしているように見えちゃうんだなって思ったら……急に悲しくなって勝手に涙がでてきちゃった」  つい本音がこぼれてしまう。そういったとたん、またボロッと涙があふれてきた。こんな反応に、さくら自身が驚く。あわてて涙を拭いて照れ隠しに微笑むと、新太まで泣きだしそうな顔をしていた。 「新太くん? びっくりさせてごめんね。自分でも訳がわからなくて。もう大丈夫だから……」  そういった瞬間、強く抱き締められた。息がとまるんじゃないかとおもうくらい強い抱擁だった。 「俺こそ、ごめんなさい。ちゃんとわかってあげられなくて。子供で、ごめん」
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