第十一章 好きだから

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「ち、違うの。そんな謝られるようなことじゃなくって……」  新太の胸に手を置いてちょっと距離を取る。茶色のふわふわな髪が揺れて、新太も顔をあげる。 「新太くんに、過剰に反応しちゃうの。以前だったら全然気にしないようなことでも、こうやって勝手に涙でてきちゃったり。おかしいよね」  新太はじっととさくらをみつめたあと、熱を帯びた大きなため息をついて微笑んだ。見ているさくらが溶けてしまいそうな笑み。コーヒーのなかにゆっくり溶けていく砂糖みたいに、心を甘く揺らしていく。  さくらの頬を新太は両手で包んだ。温かい、大きな手のひら。その心地よさに、撫でられている猫のように、目を細めてうっとりしてしまう。 「教えて」  そう呟いた新太の声はかすれていた。 「どうしてそんなふうになるの?」  新太の瞳はまっすぐさくらをみつめ、反らすことを許してくれない。その瞳に導かれるように、自然に口を開いていた。 「すごく。すごく新太くんのことが好きだから。好きで仕方ないから」  新太は一瞬、苦しげにみえる表情を浮べた。それから照れたような笑みを浮かべて目を伏せる。どこかせつなげなその表情から目が離せないでいると、ゆっくりと近づいてきた唇が、さくらの唇に重ねられた。  角度を変えて何度も何度もかさなりあう。軽く舌先で唇をなぞられ、甘いため息が無意識のうちにこぼれる。一旦離れる唇。その唇が触れるか触れないかくらいの距離で新太が囁いた。 「俺もさくらさんが好きすぎて、頭がおかしくなりそう」
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