第十一章 好きだから

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 切実なその響き。新太の声に反応して、さくらの唇も震えてしまう。それが合図になったように舌が絡み合うような激しいキスになる。  身体に力が、はいらなくなっていく。新太はさくらをどんどんちがう世界につれていってしまう。  心臓が波打つほどに激しく高鳴って、今まで感じたことのなかった欲求が、さくらの最奥で瞬きはじめる。泣きたくなるような、苦しいような、それでいてひどく甘い感覚に、どうしていいのかわからない。感じたことのない強い衝動が、さくらの内側からつきあげてくる。  唇がそっと離れた後、至近距離で目を合わせたまま、新太が呟いた。 「抱いても、いいですか?」  いつもの新太のものより低い声。さくらを求めてまっすぐにみつめてくる瞳。答えるよりも先に、ほとんど無意識に彼に向かって手を伸ばしていた。新太がその手を掴む。指を絡める。  新太の体重がゆっくりとかかっていって、ソファの上にさくらが横たわる。いとおしむようにさくらを抱きしめたあと、唇を重ね合わせた。
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