第十二章 可愛いひと

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 さくらはちょっと困ったようにうーん、と一回唸ってから口を開いた。 「かわいい部分もモチロンあるけど、ちょっと強引で、時々イジワル。それから意思が強くてまっすぐで男っぽい、かな」 「えー、なんかトータルだと微妙に悪化してない? 俺のイメージ」   ちょっと拗ねたようにそういうと、さくらが目元を緩めて、恥ずかしそうに視線を新太から外してから、真っ直ぐ前に向けた。 「でも。最初より、もっと好きになってる」  新太はようやく落ち着きはじめた、疼くような感覚がまた、体の内側から波打ってくるのを感じてしまう。さくらを抱き寄せ髪の毛にキスをした。 「あー、ホントずっと一緒にいたい。いちいち別の場所に帰るのキツイ」  さくらも新太の胸のなかでそっと頷く。そんな仕草も、やっぱりかわいくてたまらない。暫く会えない時間を我慢できるか自信がなくなる。 「さくらさん、明後日は内定者説明会って言ってたっけ? 何時からですか? 場所は?」  新太は自分の直近のスケジュールを頭のなかで確認しながら矢継ぎ早に尋ねる。 「たぶん、二時からで場所は丸の内本店。どうして?」  さくらが不思議そうな顔をして尋ねる。 「俺もその日、スポンサーと打ち合わせで一時に渋谷だから。午前中の授業さぼってうちに来てください。俺の部屋からでかけましょう」  さくらは真面目だから授業をサボるなんて、いやがることはわかっている。しかもテスト前だ。けれどここを逃すと、いよいよ身体が空かなくなってくる。まずは真剣かつ真面目な感じの断定形できりこんでみる。
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