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召使を運んでいる余裕はないので、校舎裏に寝かせたままで、心当たりは何もないが、とにかく揃って裏門から高校を抜け出した時だった。
「あれ? お前ら、さぼり?」
金髪の不良がちょうど裏門に現れて来た。ナオが春日! と焦った顔のままで飛びついていく。
「玖堂さんがいないんだ、春日! 探すの手伝ってくれないか?」
え? と首を傾げる不良。
しかし雷夢は、金髪の姿を一目見た瞬間、言い知れない不快感が背に走っていた。
無防備に不良にすがりつくナオを、無言で掴んで不良から引き離した。
「え? 竜牙さん?」
「……ちょっと。アンタ、誰」
自分でも驚くほどに、険しい声色がこぼれた。
紛れもなく不良と同じ顔で、気配すら似た金髪の学生がそこにいるのに、雷夢の中で「コイツは違う」、その感覚だけが厳としてある。
よく見れば相手は、アオイが毎日着けている蒼い石の指輪をしていない。偶然外しただけかもしれないが、やっぱり違う、と雷夢に確信がつのる。
雷夢がナオをかばいながら、あまりに厳しい目色で睨むために、ははは、と不良が、降参するようにもろ手を上げた。
「ええー、マジかぁー。俺これでも相当、非の打ち所のない代打を自負してんだけどなー?」
「え? 春日……?」
「タツキライム、出生不明、ノーカウントで雷をぶちかます異端種だって聞いたけど。何か感覚まで鋭いっぽいの、反則でねー?」
華奈は雷夢に、あなた、霊感があるんじゃない、と言ったことがあった。よくわからない日本語だったが、要するに何がしかに感覚の鋭い者をそう言うらしい。
雷夢としては、そもそも襲撃者の知り合いだったアオイが警戒対象であることに加えて、翌日アオイの偽者が現れるなど、偶然であるわけがない。そう感じているだけだ。
とりあえず相手は、少なくとも昨日の雷夢の挙動を知る者なことは確かだ。雷なんてここ最近は、昨日しか使っていないのだから。
雷夢の名前に雷の字を当てられたのは、何もおかしな話ではない。小さな頃から雷夢は感情の起伏に合わせて、雷を自由に放つことができるのが特技だった。
「……ミカミ、注意して。アイツ多分、この高校がわかるってことは、玖堂サンの件に関係してる可能性が高い」
「え!? 春日が!?」
いや、春日のそっくりさんが!? と言い直すナオは、存外に雷夢を信頼しているのがついでにわかった。大して話したこともないのに、それは不思議だ。
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