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──東京都、新宿。
何かと刺激が多いこの街を、あたしは猫のように警戒して歩く。
…行き先は職場。
その名も猫バー“黒理”だ。
「よろしくお願いしまーす。」
店に入り、取り敢えず挨拶をする。
「はーいよーはいーーよー♪はっ!」
「フッ!ニャー!」
「ニャ~!」
「…。」
…時々これが職場って言って良いのかって思うことがあるわ…。
「店長、またその遊びやってんの?」
店長は手旗信号のようにリズミカルにおもちゃを振り、猫と遊んでいる。…開店前はいつもこうなんだから。
「いや~、これがなかなかどうして。猫達のお気に入りみたいでね?ワタシも楽しくって止められないんだよね~♪」
「じゃあ着替えて来るから、ちゃんと準備しときなさいよ?」
「は~い♪とりゃーっ♪」
「ニャッ!」
聞いてないし…。まぁいっか♪
ちょっと狭くて暑い更衣室に入り、鼻歌交じりに制服に袖を通す。
…言い忘れたけど、あたしは真理。この猫バーの店員だ。
「…ふぅ。もう出て来て良いよ?」
「…。」
この人は都 光(ミヤコ ヒカリ)さん。このバーの店員だ。
あたしが猫・接客担当で、都さんがバー担当って感じかな?全部で12匹いるからね…(今日いるのは8匹みたい)
「何読んでるの?…禁忌の娘には教会に…?」
「所謂『異世界転生』と言うもののようです。本棚に入れて置きますので、良かったらどうぞ。」
「ふーん…。」
都さんはちょっと不思議な女の人。誰よりも早く店に来て、開店前は必ずこっちでグラス拭きなんかをやってる。
この時間になるとあたしが着替えるから、その間は気配を消して読書してる訳。変わってるでしょ?
でも読んでる本は優しい感じのが多いんだよね。(まぁ、接客業だからいつ休憩時間が出来るかだし、読めるかは分からないけど。)
「んん~っ」
伸びをして…さーて、仕事頑張りますかっ♪
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