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──PM 9:13
…店のそこかしこでうとうとしている猫達に気付いて、あたしはもうそんな時間かと時計を見たところ。
「ほらまたそんな所で寝て…お客さんに踏まれちゃうよー?…ふふ♪」
──白猫のふーすけが棚に頭を突っ込んで寝てる。…と言うか、たまに踏んだり蹴ったりしちゃうんだけどね、あたしが…。
──この時間にもなると、開店時に起きて来た猫達は寝始める。
この店の常連さんはこう言う猫のパターンも分かってて、来店時間を決めている人もいたり。
女「かわいい~♪皆寝てるー」
男「××××…」
カップル客だ。うちのファミレスみたいな席を「落ち着く」と言ってくれるお客さんもいる。
…まぁ、どちらかと言えば猫優先の配慮だから、バーっぽくないと嫌う人もいるかもだけど。
「あ、店員さん、写真オッケーですか?」
店長「はーいOKですよ~♪寧ろじゃんじゃん撮って、ワタシにも見せて欲しいなー☆
…ぁ、失礼しました。」
客「…ぁはは…。(軽い会釈)」
…コロンコロン。
「いらっしゃ…いませー♪」
う…バンドウさんだ…。あたしこの人ちょっと苦手…。口髭とオールバックとサングラスの組み合わせがヤ〇ザにしか見えない…。
バンドウさん「アラスカ。」
都さん「アラスカですね、畏まりました。少々お待ち下さい。」
アラスカって言うのはカクテルの中でもかなり強い部類みたい。…シャルトリューズって言う、猫みたいな名前のリキュールと、ジンを混ぜるんだって。この人はほとんどこれしか飲まない。
シャカシャカシャカシャカッ!
──アラスカを作り終え、都さんにそれを渡し、あたしを指で呼ぶ黒店長。
「モッチ起きたみたいだから、ご飯あげてやってね♪」
──店長はモッチって呼んでるけど。
名前は『おもち』。マンチカン、レッドタビー、大人のオス。
「ミャ…」
「ぁー、はいはい。起きたかおもちー♪
うりうりー♪」
バンさん「…店員さん、出来れば見やすい場所でやって頂けると。」
「ぁ、はいっ。分かりました♪」
都「こちらで宜しいでしょうか。」
…大きな踏み台を見えるところに置く都さん。
バ「ぁあ、どうも。」
あたし「…はーい♪じゃあおもちー、ご飯の時間だよー…♪」
ステージの上に皿を置いて、そこにカリカリを出して、おもちを近くまで連れて来る。
──食べないことはたまにしか無いんだけど。この人の前でやるのは何だか緊張するなー…。
「フ…ミャウッ、ウ厶ムッ。」
食べたー…!(…何緊張してるんだろ、落ち着けあたし…。)
アッシュ「…ミャア。」
あ、アッシュ…!まさか。
アッシュ「…。(スッ、フッ)」
皿を前足で引き寄せて、頭を突っ込んで食べ始めるアッシュ。…ぁあやっぱり…!
「ちょっと、それおもちのでしょうがっっ
店長ーっ?」
…流石に声は抑えつつ。
黒店長「はいはい♪おいでアッシュー☆」
おもち「…。」
…食事の邪魔をされて気が散っちゃったのか、餌を取られたポーズのまま固まってる…。
「ほらほらぼーっとしないの…。またアッシュに取られちゃうよー?♪」
「…。」
──向いたそっぽにはバンドウさんが。…青リンゴみたいな色のカクテルを美味しそうに飲み干した。
バ「すみませんお代わりを…♪」
「あ、はい…じゃなかった都さーん」
…店長とバトンタッチした都さんに『同じのもう1つ』を示すサインを送る。
…あれ?今バンドウさん笑ってなかった…?
「お待たせしました、アラスカです。」
あたしに軽く頭を下げて、カクテルを飲む。…ぁ、また笑った。
──バンドウさんの視線の先にはじゃれ合うおもちとミカが。
…まぁそっか♪猫バーだもんね…☆
よーし、仕事終わりまでもうちょっと。頑張るぞー♪
バンドウさん「…はぁあー……♪」
い、一気に飲み干しちゃった…す、すごっ…。
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