リュウジ

4/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
リュウジは頭を抱えた。 もう駄目だ・・。顔を見られた。 直ぐに警察に連絡が行き、俺は捕まる・・。 「どこまでゆきましょうかね。」 はっと顔をあげて、バックミラーに映る運転手の顔を見つめる。 車に乗り込まれてナイフで脅されてるというのに この男は、薄い赤い唇をにんまりと貼り付けて笑っている。 リュウジは背筋に何とも言えない悪寒を感じた。 「あんたを傷付けるつもりはない。金なら払う。 どこか遠くでおろしてくれればいい。」 「わかりました。 金はいらないですよ。盗んだものでしょ?」 男は軋るような笑い声をたてた。 「どうぞ。」一時間ほどで車は停止した。 リュウジは妙な緊張から解放されて、ほっと息をついて降りた。 「なんで・・。」 俺を助けたんだ?と聞こうとして、その言葉を飲み込んだ。 「じゃ、幸運(グッドラック)を。」 男は窓を開いてリュウジに手を挙げると、そのまま走り去った。 重いカバンをぐっと握りしめ、リュウジは顔をあげた。 塀の向こうに大きな観覧車が見えている。 リュウジはゲートに向かって歩き出した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!