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リュウジは頭を抱えた。
もう駄目だ・・。顔を見られた。
直ぐに警察に連絡が行き、俺は捕まる・・。
「どこまでゆきましょうかね。」
はっと顔をあげて、バックミラーに映る運転手の顔を見つめる。
車に乗り込まれてナイフで脅されてるというのに
この男は、薄い赤い唇をにんまりと貼り付けて笑っている。
リュウジは背筋に何とも言えない悪寒を感じた。
「あんたを傷付けるつもりはない。金なら払う。
どこか遠くでおろしてくれればいい。」
「わかりました。
金はいらないですよ。盗んだものでしょ?」
男は軋るような笑い声をたてた。
「どうぞ。」一時間ほどで車は停止した。
リュウジは妙な緊張から解放されて、ほっと息をついて降りた。
「なんで・・。」
俺を助けたんだ?と聞こうとして、その言葉を飲み込んだ。
「じゃ、幸運を。」
男は窓を開いてリュウジに手を挙げると、そのまま走り去った。
重いカバンをぐっと握りしめ、リュウジは顔をあげた。
塀の向こうに大きな観覧車が見えている。
リュウジはゲートに向かって歩き出した。
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