第一章 もしかしたら

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「短期出張じゃないの?」 「短期出張ならこんな大げさにしないよ。少なくとも一年。だから。とりあえず返事を保留して、綾香に相談しようと思ったんだ」 「そうかあ。一年…。長いね」 「そうだろう」 「でも、それって栄転なんでしょ」 「まあ、そうだけど」 「じゃあ、断っちゃダメじゃない。一年くらいだったら我慢するよ。晴久が浮気しないように、私が毎月一回くらいニューヨークに様子見にいくから」 「そんなの大変だぞ」 「格安チケットがあるから大丈夫」 「それに、少なくとも一年ということはそれ以上長くなることもあるということだから」 「ふ~ん。行くとしたらいつから?」 「10月から」 「まだ5か月あるじゃん。それまでの間、私、晴久にべったりくっついて離れないからいいや」 「準備なんかで忙しくなるからそうもいかないさ。それと、この話には続きがある」 「続き?」 「そう」 「何、何?」 「それは今度会った時に話すよ」 「えー、そんなのズルイよ。私眠れなくなっちゃうじゃない」 「会って話したいんだ」  悪い話の感じはしなかったので、ここは引いておく。 「わかった」
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