56/60
前へ
/45ページ
次へ
『メタフォル』 雨に濡れた路面には ただ静かな水溜りがあるのみ 砂利を濡らし、堤防を濡らし 遠浅の海を叩いた雨の名残には ただ静かな水溜りがあるのみ 割に合わない言葉なら要らない 汗滲む労働の帰りには ただささやかな風が吹くのみ のぼり旗がひらり、イトトンボがふらり 陽の滲む労働の帰りには ただささやかな風が吹くのみ 間延びした言葉なら要らない 朝の陽ざしが変わらずあるから 人々は言葉を失わないのだ 夜に音が沈んでいくのも同じ ただいつも同じ言葉が欲しいだけ
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加