1.酔っぱらい事件簿!?

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 さて、他のお客さんも迷惑そうにこっち見てるし、取り敢えずこっから動いて頂こうかしら。 「あの~…」 「……うんっ?」  今、私に気付いたみたいな反応された。  え?さっき話してたよね?  どっかにトリップしてたの、今?  そんな疑問を抱きながらも 「他のお客さまのご迷惑になりますので、ここから動いて頂いてもよろしいでしょうか?」 おじいちゃんを店内へと誘導する。 「あ…あぁ…」  そう言うが早いが、おじちゃんは動いてくれた。  …自動ドアの方に、少しだけ。  動く方向逆だよ!!  …って、あぁ!  自動ドアに手を付いたらダメですよ!危ないですから!!  自動ドアが動く度に転びそうになるので、それを見かねた店長が遠隔操作で自動ドアを止めた。  そんな気遣いも大切だけど、それより助けてくれた方が私は嬉しいんだけどなぁ…。 「あのぅ、少しだけこっち行きましょうか?」  おじちゃんの背中に手を当て、優しく端っこの方に誘導しようとした。  店長は帰らせるか買い物させろって言ったけど、このまま帰らせると危険だよね…。  取り敢えず端っこにいて貰えれば、他のお客さまのご迷惑にはならないし、その後の事は後で考えよう。  そう思ってるのに、おじちゃんは動いてくれない。  何で?話聞こえてないのかな?またどっかにトリップしてる?  何度話しかけても反応してくれない。  …どうしよう…。 「あのなぁ…」  あ、反応してくれた!? 「はいっ!」 「酒が欲しいんだけど、どこにあるかね?」  えっ、まだ飲むつもりなの、このおじいちゃん!?  さっき飲みすぎたって自分でも言ってたよね? 「お酒はもうやめておいた方が…」 「100円しか持ってないんだけど、買えるかね?」  …えぇ?  私の声は聞こえてないの?  っていうか、所持金100円て。 「ごめんなさい、ないですねぇ…」 「100円で買えないかね?」 「すいません、100円のお酒はないです」 「100円で買えるお酒持ってきてくれんかね?」 「ですので、100円で買えるお酒はこちらには置いてありません」 「ちょっと、これで買ってきてくれんかね?」  …………。 ──ダメだ。話通じない…。  私は早々に諦め、店長に助けを求めようとカウンターの方に戻ろうとした。  が。 「あのなぁ……」    またおじいちゃんに呼び止められた。
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