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さて、お前さんはこの世界の宗教についてどのくらい知っているかい?
……まったく、か。じゃあ説明しつつ、話すか。
この世界には四つの国があり、それぞれには独自の宗教があるんだ。それぞれの宗教には神話や経典といったもんがあるらしく、その教えをその国に住む人は信じなければならない。……例え、事実と異なる部分があったとしても、だ。
国に住む人々はそのことには知らなかったり、気づいていても「神を冒涜する」だのなんだのと言って触れなかったりする。
彼らは自分たちの宗教を信じてさえいれば、何とでもなると思い込んでいる節がある。宗教に頼ったところで何にもならない時だってあるだろうに。
……ん? 宗教を毛嫌いしているのかって? うーん、そういうわけじゃねえよ。俺だって何かを信じたくなるときだってある。もともとは西の方にある国の宗教を信じていたしな。
ただ、なんてのかな。おふくろが流行り病で死んだときに近所の人たちが「北の国に住んでいるのに、西の国の宗教を信じていたから死んだんだ」なんて、ずーっと大騒ぎしていてな。あの時は宗教なんざ関係なく、体の弱い人はどんどん死んだのにだぜ? 北の国の宗教を信じていた人が死んだときは何も言わないくせに、他の宗教を信じる人が死んだときだけは「罰があたった」だの何だのって。
それ以来かな。特定の宗教を信じることをやめたのは。……何だか馬鹿らしくなってな。
はっきり言って余計なお世話だぜ。何を信じるかなんて自分で決めたっていいじゃねえか。なんで国ごときに強制されにゃならんのだ。お前さんだって、そう思うだろ?
……その結果、俺はどの国からも追放されて、こんな僻地の山奥にひっそりと住んでいるんだがな。
そう、憐れむような眼で見るな。裕福ではないとはいえ、これでも結構楽しい生活は送れてんだぜ。……少なくとも強制的に決められた宗教を信じ続ける生活よりは気が楽なもんだぜ。
……お前さんでも、もう知っていることかもしれないが、今この世界では宗教の違いによって国同士の戦争がおころうとしているんだ。要は自分たちの宗教を信じろと押し付け合っているわけだな。はっきり言って愚かなことだとしか思えん。
俺はこの世界の在り方は歪だと思う。だからこの世界が大嫌いだ。
……でもな、こんな世界にも救いがあるもんだな。宗教を信じているが故に、どこまでも人に優しくあろうとする人がいるんだよ。たとえ自分がどんなドン底にいようが、助けを求めている人がいれば手を差し伸べようとする人がいるんだよ。
宗教を信じる人が、こういう人々で溢れていたら、きっと俺の人生も違ったんだろうな。
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