序章

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「鬼の軍勢が退いていくぞ!!」 夜の樹海に、何千もの武者達の勇ましい声が響き渡る。 一つ一つの松明の炎が重なり、大きなうねりとなって照らす、鬼や人間の亡骸。 そして、次々と闇に消えていく鬼達と、得物を掲げる武者の群れ…… 虎の顔を象った兜を被り、赤い甲冑を纏った少年は、味方の軍勢に習い、横隔膜を精一杯動かし、鬨をあげる。 少年がいる場所は、所属する西條家が護る最前線の小さな砦の先にある山間の大きな樹海の中…… 軍が放った斥候の合図の狼煙により、敵軍の夜襲をいち早く察知した西條家の軍勢は、少年を含む伏兵を森の中に忍ばせ、敵の軍勢を迎え討ったのだ。 今、争いを繰り広げているのは、『羅剛』と呼ばれる鬼が率いる人外の者達の軍勢…… 羅剛は、遥か南の断崖絶壁の火山帯の島……炎牙島に住まう鬼達の王である。 十年程前、突如、配下の妖(あやかし)達を従え、ヒノモトの国々を襲いはじめたこの鬼の王は、永い戦乱の火蓋を切った元凶であった。
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