罪食らう罪

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夜空が白むに伴って弱まっていった雨は、今も微かに降り続けていた。 郊外の娼家通りに満ちていた死臭が薄くなっていた。路上にできた水溜まりに映る人だかりの像が雨粒の波紋で細かく刻まれている。夜を徹して遊んでいた客だけでなく娼婦も加わっていた。 人々は見ていた。通りを横断して並ぶ、何者の行く手も阻む死者達を。生命の証は疾うに失せ、土気色の肌をして眼は萎んでいる。在りし日の格好を構え、敷き詰められた財宝の上に腰を落ち着けていた。大きく口を開き、詰め込まれた金貨で喉が膨れる鱈の親分を中心に、彼らは金銀の杯を握り、宴を挙げていた。 見物人は誰一人として宝に手を出そうとはしない。触れたら最後、自身の大罪を認めたものとされ、共に首を連ねることになるだろう。好奇の囁きは張りつめ、人々は一日の始まりを厳かに迎えることを教わったようである。 背を向けたらそれまで。瞳を汚した低俗は白昼の下で片付けられ、靴の芥と化していく。
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