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「マドモアゼル」
ジョゼフィーヌは肩を竦めて、此方を見下ろしていた。跪いて、差し出した手から後退りする。伸ばし渋っている彼女の掌が重なるのを待たずに此方から握ると、床から膝を離した。
引き寄せればたどたどしく続いた。互いの肩が近づき、すれ違い、体を入れ替えて回旋する。
踊ればいい。手荒な作法しか知らない雑兵と。
足並みを揃える。厳格に。立ち位置は狂わせない。導いて、連れてゆく。極まり、限られていく所作。明暗を浮き沈み、翻される表情。
聖域を冒す自覚が高揚させ、乱される鼓動。定められた終着が迫り、精神が弄ばれずにはいられない。
己の手にしがみ付いている微熱。
この場所に足止めを食らったことが思し召しだとしたら、こんな遊戯を当て付けてみるのもいい。この罪に対する罰を伺おう。
彼女は目を逸らさない。瞳に隠し持っていた鮮やかな感情が舞い上がり、輝きを発していた。
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