A~エース~

66/82
前へ
/334ページ
次へ
 ああ、もう  これからふりかかるであろう面倒事への覚悟と共に、和泉の口からは溜め息が漏れる。 「たまたま式部と行った店が、課長の行きつけだったんですよ」 「へぇ。そうなの?」 「あー・・・、まぁ」  歯切れ悪く答える茉莉果にそう言えば、意中の店員の彼はどうなったのかという疑問が頭を過る。  ただ、こんなところでそれを口に出したら、後の友情に亀裂が入ることは間違いない。さすがにそれくらいの分別はあった。  後でラインしてみるか 「納得したところで、仕事に戻ってもらっていいですか?」  頭の中でぼんやり思いながら、主任にそう作り笑いを浮かべる。 「ハイハイ」  納得したのか肩を竦め、彼はつまらなさそうに背を向けた。
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加