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・・・別に、情に絆された訳ではない。ただ、こんなことをしている場合ではないと思う。
「意味分かんない」
就業後の給湯室で、和泉はそう呟く。隣では、スマホをいじる茉莉果が肩を竦めて和泉を見た。
「安心して。私はもっと意味が分からないから」
そう言うと、茉莉果はスマホの画面をこちらに見せる。
「ハイ。みじん切りのやり方はこう。鶏肉は親子丼用のスライス肉を買って来たから、これ以上は切る必要ナシ。後は、ケチャップとウスターソースを事前に混ぜておく」
「了解~」
茉莉果が提示した画面を見ながら、和泉は玉ねぎに切れ込みを入れていく。
「いや。いくら何でも、アンタがチキンライスの作り方も知らないなんて思ってもなかったわ」
やれやれ、と呆れ調子に言われれば、こちらとしても返答に詰まる。
「・・・だから、冷凍にしよって言ったじゃん」
そんな弱音を吐き出せば、茉莉果には尚も溜め息を吐き出されてしまった。
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