78人が本棚に入れています
本棚に追加
「まさか、アンタがそこまで女子力に乏しいとは思ってなかったわ」
そう言うと、茉莉果は和泉が火を着けたコンロをチラリと見る。
「そんなに強火でやってるから焦げたんだと思うわよ。このコンロ、火力は強いみたいだから、中火で充分」
「・・・」
何やらいたたまれない気分になりながら、和泉はツマミを回した。
「因みに和泉って、実家暮らしだっけ?」
「まぁ」
「今からでも遅くないから、お母さんに教えてもらった方がいいと思うわよ。コレ」
そう訴える彼女の視線の先には、真っ黒に焦げた鶏肉の残骸がある。
和泉は溜め息を吐くと、それをキッチンペーパーに包んで捨てた。
「とか言われても」
「?」
「料理とかできる状態じゃないからね、ウチの母親」
そう言って溜め息を吐くと、流石の茉莉果も固まる。
「・・・何かワケアリ?」
「昔飲んだ薬の副作用か何かで、脳に障害が出ちゃったのよ。だから、長いこと料理なんてご無沙汰」
「はー。成る程。
・・・って和泉、フライパンは一回洗った方がいいわよ!」
至って普通を装いながら、フライパンに継ぎ足す油を手に取ると、茉莉果から目ざとい制止の声がかかった。
最初のコメントを投稿しよう!