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「うん。それは何で?」
「何で、って」
「だって、君。俺のことはかなり好きでしょ?」
「ーっ」
この男は何を言っているのだろう。混乱する頭で彼を見ると、途端に両手で顔を掴まれた。
「ホラ。今も俺が好きで堪らない、って顔してる。結婚に必要なのは、両性の同意だけだよ?」
「そんっ、なの・・・」
それ以上は言葉にならない。彼の唇が、言葉の先を奪ったからだ。
「ン・・・。ーっ」
「嫌なら、噛みつくなり突き飛ばすなり、お好きにどうぞ」
息継ぎの合間にそんな囁きが聞こえる。
答える余裕もなく、ぼおっとした頭で彼を見るが、言葉を紡ぐ前に彼に唇を割り開かれた。
「んんっ・・・」
秋津は和泉の後頭部を抱え、否応なしに舌を絡めてくる。
ぞくり、と背筋に心地よい感覚が走った。
「ア、ダメ・・・です・・・」
「ダメ?嫌じゃなくて?」
「っ・・・」
的確に確信を突いた言葉を向けられてしまえば、泣きそうな顔になってしまう。
嫌じゃない。でも、ダメなんです・・・
「だったら止めないよ」
和泉の心の叫びを見透かしたような言葉を向けると、秋津は再び和泉の思考を蕩かせるようなキスを続けた。
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