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「何よ?浮かない顔ね」
木曜日、見事な腕前が発揮されている茉莉果の弁当を前に溜め息を吐くと、案の定作り手の彼女からはそんな言葉を向けられた。
が、不満気な表情の後、一転して彼女は目を細める。
「やっぱりあの後、課長と何かあったわけ?」
「・・・何か、っていうか」
あるにはあったが、それはもう記憶の彼方へ葬り去りたい類のものだ。
「とりあえず、気持ちに応えることはできないって言っておいた」
「ナルホド・・・」
もう少し食いついてくるかとも思ったが、ヤケに素直に茉莉果は頷く。昨日、家の事情を一部話したからか。
「それだけにしては凹んで」
「そう伝えたら強引にキスされたのよ」
「え・・・」
「しかも、『嫌なら噛むなり突き飛ばすなり、好きにしろ』とか言われてさ。できるわけないじゃない!」
そこまで吐き出せば、腹立たしさが沸いてくる。
「あー、もう!腹立つったらないわ!!」
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