Q~クイーン~

18/60
前へ
/334ページ
次へ
「そんなこと言ったって」 「ハイハイ。アンタを嵌めた憎き男は、めでたくオリの中よ。よかったじゃない」  すっかり過去のことのように茉莉果は言うが、和泉にとっては喫緊の問題だ。何しろその過去が原因で横領の疑いをかけられ、秋津には「どうにもならなくなったらもらってやる」と言われているのだから。  ・・・  いや、むしろ彼は和泉には何もしてほしくないのかもしれない。  その可能性に思い当たったとき、秋津は何か知っているのかもしれない、という考えに行き着く。  そういえば、部長室から出た後見計らったように待ち伏せていた彼は、何か言いたそうだった。 「・・・そうね。少し、話してみるのもいいかもしれない」 「やぁっと、その気になったのね」  隣の茉莉果はどうやら勘違いをしているようだが、まぁいい。 「茉莉果。今日」 「ハイハイ、お昼を食べたらお邪魔虫は退散するわよ。あとは、どうぞ二人で」  呆れたような茉莉果の声が響き、次いで遠くの人ごみの中に秋津を発見する。 「あ」 「来たわよ。愛しのダーリンが」 「ゴメンね、待たせて」   「いえ」  こちらを見るなり駆け寄ってきた秋津にそう返事をしながら、和泉は内心の決意を固めていった。
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加