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気づいた時にはもう遅い。彼の顔が近づいてきた。
「気持ちよかった?俺のキス」
!!
「ーっ」
耳元で囁かれた言葉に身をすくませ、泣きそうな顔で秋津を見ると、彼は嬉しそうに和泉を見る。
「好きになっちゃってゴメンね」
それだけ言って、彼は和泉の唇に触れた。
彼の唇がそれだけで離れていくのは、ここが人目のある公園だからだろう。
「何、考えてるんですか・・・」
「へ」
「貴方は、何のために私に近づいたんですか。どうして私に仕事を辞めさせたいんですか?」
分からない
想像の範疇を超えた彼の行動と、それにどこか心溶かされる自分を認識しながらも、疑心暗鬼な気持ちを捨てきれない自分への嫌悪感で心の中はドロドロだ。
それでも、誰に裏切られてもどんなに傷付いても、自分を保つことだけは忘れてはならない。自分を守れるのは自分だけなのだから。
「お願いだから、これ以上踏み込んでこないで」
怖い
その気持ちは涙となって、目尻から溢れ出す。
和泉のそんな感情など承知の上なのか、秋津は何も言わずに和泉を宥めるようなキスを顔中に降らせた。
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