不覚

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「ん!」 幸子に手を振ってから数十歩歩いた。 なんだろうか。 中山はふと後ろを振り返らないといけない気がした。 なんだかわからないが、なんだか寒気がするのだ。 手を振って別れてから少し時間が経った。 自分の中に幸子のことがまだ気にする自分がいるのか。 未練があるのだろうか。 それにしても 幸子は別れた場所にまだいるだろうか。 まだ手を振っていたりしているのだろうか それとも行ってしまっただろうか。 中山はゆっくり後ろを振り向いた。 そこには幸子は別れた場所にまだいた。 足を広げて手伸ばしたまま動かない。 眼孔が光って見える。 涙を流しているように見える。 彼女は手の先に何かを持っている。 黒く光るものだ。 よく見ると銃だ。 銃をこちらに向けて構えている。 周りから悲鳴が聞こえる。 何で銃を持っているのか。 もう一度目を見る。 瞬きをせずこちらを向いている。 本気の目だ。 早く逃げないと。 中山は急いで走りだした。 早く。早く。伏せるぞ。 完
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