第三章

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「下らない……」 ……泣いたところで起こってしまった事は何も(くつがえ)るわけでもないのにと、頭を振ってベッドから起き上がり、病室の外に出ようとした。ガラリとドアを引くと、そこには警官が立っていて、 「目覚められたのですか?」 と、訊かれた。 「ああ」と頷いて、気分転換のつもりで「ちょっと屋上に行く」と言い置いて、廊下を歩き出そうとすると、 「いけません」と、身体を止められた。 「病室からは出ないよう、出してはいけないよう言われています」 肩を掴まれ、そう告げられた。 「出しては……いけない?」 その引っかかる言い方に聞き返すと、 「……すいません、そういう命令です。それと、ここは閉鎖病棟ですので、許可無く外には出られません」 と、(うやうや)しく頭を下げられた。
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