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男運が悪いのはこの街にいるからに違いない
1
ウエストのきついワンピース
買ったばかりの硬いヒール
親指の爪の横のささくれ
私にとって世界は、それに近い。
着心地の悪い服を着て、慣れない靴でがたがたの道を歩いて、剥けそうで剥けないままの皮を人差し指でしきりに触る。血が少しでたときの痛みをちくちくと味わって、次に人差し指のささくれに気づく。そしてそれを中指で触る。
見た目に反して彼女の中身は少し暗かった。
楓は前に座る男性の視線を感じて、携帯の画面から顔を上げた。
メガネをかけたその男性は目が合うと同時に視線を逸らした。ダサい服装にダサい雰囲気。床屋で切ったのかと言いたくなるような髪型。
身幅に合っていないジャケットと袖で鼻を拭うしぐさ。地味だけど、華やかものが好きな典型的な男。
女も男も、自分にないものを求める。
しかし、楓の欲しいものは、少し違った。
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