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「どこって、お前馬鹿か?隣の…──あれ?」
「隣の誰よ?私が来た時から、誰もいなかったんだからっ!しっかりしてよ…。」
サクラが、いない。
今、隣に居たというのに…──。彼女の姿は、どこにも無かった。
「お兄ちゃん、ホントに大丈夫?」
「何が?」
「あたま。」
「……。」
紗江がうるさい。せっかく楽になっていた気分も、すっかり元に戻っていた。
「ね、頭打ってるし…事故の時の精神的ダメージでおかしくなってるのかも。」
「オレは、別にどこも悪くない。」
「分かんないよ?自分でそう思い込んでるだけで、ホントは…──。」
「うるさい!」
「!何よっ、私心配してあげてるのに!!」
「心配してくれなんて、頼んだ覚えは無い!」
「…あっそ!私、帰る。」
「さっさと行けよ!」
ツカツカと、あからさまに不機嫌な足音が遠ざかって行った。
「…クソッ。」
ため息をついたオレは、そう言ってベットの手すりを握りしめた。
しばらくして、病室に看護師さんが夕食を運んできた。
「木城さん、お食事ですよ。あら?今日は、ご家族の方居ないの?」
「はい。」
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