†紅い服のキミ†

3/6
前へ
/39ページ
次へ
違う…何か、違う気がする。 「木城君、わかるかい?」 白衣を着た、たぶん医者が尋ねてきた。オレは、身体を起こそうとしたが…激痛で起き上がることも無理だった。 「まだ、そのままにしてて。絶対安静だからね。」 「オレ、なんでこんな事に?」 「憶えてないかい?君、バスに乗っていて、事故にあったんだよ。」 「お兄ちゃんの乗ってたバス、居眠り運転のトラックに突っ込まれて、海に落ちちゃったんだよ!」 「そうなのか?」 「憶えてないようだね。無理に思い出す必要は無いから、今はゆっくり休むんだよ。」 母さんが言うには、オレは頭を切って5針縫ったらしい。アバラも、2本ほどヒビが入っていると言われた。これぐらいの怪我ですんだのは、まだ良かったほうだと言われた。 天井を見つめながら、事故の事を思い出そうとしたが、全くのムダに終わった。どうしても、思い出せない。1つだけ思い出せた事と言えば、オレはバンドの顔合わせに行こうとしてこうなった、ということだけだ。 「メンバー入りの話し、無くなったな…。」 オレは目を閉じ、再び眠った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加