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違う…何か、違う気がする。
「木城君、わかるかい?」
白衣を着た、たぶん医者が尋ねてきた。オレは、身体を起こそうとしたが…激痛で起き上がることも無理だった。
「まだ、そのままにしてて。絶対安静だからね。」
「オレ、なんでこんな事に?」
「憶えてないかい?君、バスに乗っていて、事故にあったんだよ。」
「お兄ちゃんの乗ってたバス、居眠り運転のトラックに突っ込まれて、海に落ちちゃったんだよ!」
「そうなのか?」
「憶えてないようだね。無理に思い出す必要は無いから、今はゆっくり休むんだよ。」
母さんが言うには、オレは頭を切って5針縫ったらしい。アバラも、2本ほどヒビが入っていると言われた。これぐらいの怪我ですんだのは、まだ良かったほうだと言われた。
天井を見つめながら、事故の事を思い出そうとしたが、全くのムダに終わった。どうしても、思い出せない。1つだけ思い出せた事と言えば、オレはバンドの顔合わせに行こうとしてこうなった、ということだけだ。
「メンバー入りの話し、無くなったな…。」
オレは目を閉じ、再び眠った。
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