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胸元にリボンのついた真っ赤な服をきた彼女。ショートワンピースから伸びた脚はスラリと長く、茶色くウェーブのかかった長い髪をかきあげる仕草が、とても様になっていた。
「何?」
「えっ?!」
こちらの視線に気付いたのか、彼女が声をかけてきた。カラーコンタクトをいれているのだろう、グレーの瞳が、まっすぐにこちらを見た。
「えっと、どこかで逢ったよね?」
…──何言ってんだ、オレ?!
猛烈に後悔した時には、すでに時遅く、彼女は大爆笑しながら呆れた表情(カオ)でこちらを見た。
「そっ、そんな怪我してるクセに、こんな場所でナンパ?」
「ちっ違う!ホントに、逢ったことないかな?!」
「クスクス、さぁ?」
彼女は、まだ笑っている。
「えーっと…君は、お見舞い?」
「うん、そんなとこ。」
「元気そうだもんな。」
「あなたは、派手に怪我してるみたいね。」
「交通事故でさ、憶えてないけど。」
「…──そっか。私、吉野 桜(ヨシノ サクラ)あなたは?」
「オレ、木城 尚義(キジョウ ナオヨシ)。」
「ふぅん。また会うかもしれないし、よろしく。」
「こっちこそ、よろしく。」
これが、彼女との出逢いだったんだ…──。
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