エタノールの匂い

やめとけばいいのに。

まぁ確かに夏だしね。

肝試しに行きたいって気持ちもよくわかるよ。

で？選んだのはこの廃病院なんだ？

うん、いかにもって感じだね。

病院の敷地に入っただけでちょっと雰囲気変わったって感じしない？

まさに心霊スポットって感じ。

ここって何年か前に手術中の医者が発狂して患者と助手を惨殺した病院だよね？
除霊とかしてあるのかな？

あっ！！ちょっと、みんな歩くの早いよ。

一人だけ置いてきぼりになっちゃうじゃん。

まぁこの人数で固まってれば安心だけど、一人で歩いたら危ないよ。
固まって歩く男2人に女2人。

後を追いかける僕。
うわぁ…先頭集団なんかいい感じにくっついちゃって…僕だけ仲間はずれみたいじゃん。

まぁいいか、お邪魔虫はあんまり干渉しないようにするよ。
どんどん先に行っちゃいな。

ってあれ？何入り口で立ち止まってるの？

もしかしてビビってる？

情けないなぁ。それとも僕を待っててくれてたとか？

うわぁ、ていうか入り口の扉こんな風にボロボロになってるんだ…。

こりゃ確かにちょっと躊躇するね。

でも行くんでしょ？
まぁ若さってのは勇気と無謀を履き違えるからね。

僕も行くよ、一人になるのは恐い恐い。

で?やっぱり君がまず扉に手をかけるんだ。

男らしい。一目見たときから君はリーダータイプだと思ってたよ。

あれ？無視？
そうかそれどころじゃないってね。

うんうん、気をつけて。

足元は暗いでしょ?

外を照らしてたわずかな月明かりだってこの中には入ってこなそうだもん。

あっ扉を開けるんだね。

いいよ、心の準備は出来てるから。
開ける?
開けてる?
開けた?

うわぁ、すごい音だ。

ギィィィって言ったね。

病院の中はどんな感じ？

うわぁ…中もすごいね。

一人じゃ絶対歩かないほうがいいよ。

なんか中は変な匂いがするね。

変なって言うより病院の匂いって言えばいいのかな？

廃病院になって結構経つはずなのにエタノールの匂いって落ちないのかな？

ところどころ窓ガラスも割れてるし。

一階はやっぱり受付って感じだね。

例の事件があった手術室は確か三階にあるよ。

ん？やっぱり手術室に行くんだ？

え？まず君が一人で様子を見てくるの？

危ないよ、僕も付いていくよ。

じゃあ女の子2人は残ったお前が守るんだぞ。

君はあいつみたいにリーダータイプってわけじゃなさそうだけど、やる時はやりそうだ。