†序章† 反乱前線

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††††††††  《薔薇十字団(ローゼンクロイツァー)》本部の廊下で、その薄氷色の床を踏みながら、御巫桔梗(ミカナギキキョウ)は声高にカードを突き付ける。 「そっちがその気なら、手加減する義理はないわ」  得意の幻想召喚の術式の発動を宣言した。見る者が見れば、それだけで恐怖に襲われただろう。  組織の《使徒》である彼女の力は、伊達でも粋狂でもない。技として昇華された、正真正銘の魔術である。  だが、そのカードの先に佇む男は、不気味にも思える不敵な笑みを浮かべた。  屈強な肉体。まるで鋼の筋肉とも形容すべきその体つき。短い白銀の髪をオールバックにし、その彫りの深い顔立ちには、褐色の瞳が光っている。  身に纏う白い衣装。それは、少しだぼついた作業服のようで、上には同じ白のベストを重ねていた。それは、どこか桔梗の神衣と通じるところがあり、そこから察するに《薔薇十字団》の支給品なのだろう。  だがしかし、異様な姿だった。その白い衣装の上を埋めるように、黒い文字の連なりが広がっていた。そして、さらには、体にも同様にスペルが刻まれているのか、首から頬にかけても黒い文字を見ることが出来た。
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