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一見して得られる感想は、異様の一言。肉体をも魔術で武装した、狂気の姿。
すると、壮齢も過ぎたであろう男は、ようやく口を開いた。
「御巫桔梗、貴方では、一生私には勝てませんよ」
その言葉に、桔梗は無言で眉間に皺を寄せる。
敵は《使徒》だ。その肩書きから、絶対の自信を持つ者が多い。だが、それでも実力が伴うかと言ったら、それはそうと断言出来ない。
しかし、目の前の男は格が違う。それは、既に知っていた。
「そうかしら。やってみないと分からないのではなくて?」
瞬間、弾かれたように桔梗は後方へと跳んだ。そして、一枚のカードが空間を斬る。
男へと近付くその間に、霧が膨れ上がるように龍となり、その顎(アギト)を天井に届かんばかりに開く。
《幻影龍(ファントムドラゴン)》。それは、《幻想召喚師(ファントムサモナー)》としての桔梗の、十八番だった。
「──そもそも、目指すものからして、根本的に違うのですから」
す、と突き出された掌。それを食い千切らんばかりの距離に龍が迫った瞬間────文字通り、霧散した。
龍が、術式の核であるカードを破壊することもなしに、砕け散った。
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