†序章† 反乱前線

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 桔梗は舌打ちしながら、新たなカードを飛ばす。  その数、三枚。  神話の槍が、三つ首の猛犬が、合成魔獣が、空間を横切り男に殺到する。  だが──── 「無駄ですよ」  あっさりと、三の魔術が男に触れようとした瞬間、破壊された。それこそ、まるで幻影のように。  床に落ちたカードが、蒼く燃え上がる。  引きつった表情の桔梗へ、こつりと足音が届く。男が、静かに歩を進めていた。 「貴方は、魔術による破壊の極みを」  男は、さらに近付く。だが、桔梗はその圧倒的気配を前に、身動きが出来なかった。 「──そして私は、あらゆる破壊の無力化を」  最悪の組み合わせ。勝敗は、戦う以前────魔術を志した時点で、決定していた。  時に、魔術師同士の戦闘は、理不尽だ。 「ふふ、まさか忘れたわけはありませんでしょう? 《神の寝所》の扉の魔術は、この私の魔術ですよ」  《神の寝所》。それは、《薔薇十字団》が誇る、絶対防御の要塞。  あらゆる敵意ある魔術干渉、物理干渉を阻み、或いは撥ね返すその扉。男の扱う魔術はそれと同等か、それ以上。  その脅威を知っている桔梗は、唇を噛んだ。
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