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──どこから間違えていたのか。
思えば、人と吸血鬼の混血種であるという羽間澄輝(ハザマトウキ)の記憶には、ない。
海外勤めの学者で行方不明だという父の顔が。澄輝の誕生と共に死んだ母の名が。
そして、今年三月以前の記憶が。
言われるまで分からなかった。そうだ。これが当たり前だと思っていた。
しかし、澄輝が他の人間と違うというのは、明白だった。
単なる記憶喪失か。それとも──。
知識はある。父に関する情報。母に関する情報。そして、地元の学校からの友人に関する情報。
しかし、それは知識であって記憶。この場合、思い出ではない。
認めてはいけない。それでも、この状況は語り掛ける。
羽間澄輝というモノの生は、今年三月より始まったのだ、と。
いや、そんなはずがない。それならば、どうやって生まれたというのか。
月の綺麗だったあの夜、買い物袋片手に澄輝は生まれた、なんてあり得ない。ナンセンスだ。
不安が強く、疑問が強くなるたびに、思考が否定材料を探す。
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