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しかし、どれだけ否定材料を集めたところで、不安も疑問も涸れることなく湧き出てくる。
あり得ない。そんなこと、あっていいはずがない。
知ることは得ること────そんな風に思っていたら、突然失ってしまった。
七海恭という、幼馴染み。悪友である、高野隆志。クラスが二年続けて一緒だった、御崎瑠奈。
この記憶は、何だ。
信じられない。この状況が。何より自身の記憶が。
悪い冗談ではないのか。この存在は、それほど薄っぺらいものだったのか。
初冬の池に張った氷より、脆い存在。
全部、まやかしの記憶。植え付けられた、記憶。自分の記憶であるが故に矛盾に気付くことができないという道化。
この命は、三月に始まった。
ならば、ホンモノの記憶は────《薔薇十字団(ローゼンクロイツァー)》と共にしか、存在しないではないか。
最初から、日常は存在しなかった。
あったのは、争いと、悲しみと、魔術師たちの笑顔だけだった。
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