そして仔猫は生まれた

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ふと、 仔猫は見上げてみました。 そこには家があって、屋根があって、…その屋根の下に鳥の巣がありました。 屋根の下に隠れるように、まるで壁からボッコリと生えてきたような、茶色い鳥の巣でした。 その鳥の巣には、四羽ほどのヒナが居ました。 皆一様に身を寄せ合って、黙って、じっとしていました。 と、その時。 ヒナ達がいっせいに騒ぎ初めました。 ぴゅーっと、空の彼方から、黒い影が滑るように飛んできて、 鳥の巣にやって来ました。 黒くて小さな鳥でした。 小さな鳥はヒナに向かってぱぱっと口にくわえた虫を一羽のヒナに与えると、また直ぐ何処かへ飛んで行きました。 小さな鳥とヒナ達はずっと同じことを繰り返していました。 仔猫はそれをただじっと見ていました。 ずっと見つめていました。
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