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完結まで読んだ方専用!【もしも…エンディング1】
もしも全てが響子の思い通りに進んでいたら…
*
◇透◇
「はあ……はあ……!」
薄暗い教団本部の中を、僕は必死に逃げ惑っていた。
花瓶のかけらで陽明を倒す作戦は、惜しくも失敗した。
瞳を狙った破片は陽明の腕に防がれて、無情にも僕の手を離れてしまった。
その隙に何とか陽明を振りほどいて走り出すも、武器もなく、身体はボロボロな僕では、これからどうすることもできない。
ナイフを構えた陽明は、すぐそこまで近付いている。
もう、ひとかけらの希望もない。
僕は、ここで死んでしまうんだ。
何もできないままで……
「ククッ……捕まえたぞ」
「あ……っ!」
不意に、僕の腕を力強い手が掴む。
その瞬間、今までの疲労が堰を切ったように溢れ出し、僕はたまらず膝をついた。
「残念だったな、よく頑張ったがここまでだ」
陽明が紡ぐ死の宣告が聞こえる。
僕は押し寄せる絶望を振り払って、陽明に精一杯の強がりを言った。
「僕を殺しても、お前とあの女は終わりだぞ! 教団本部をこんなに荒らして、僕を殺した痕跡をたっぷり残して、罪を免れると思うなよ! お巡りさんだって、そこまで馬鹿じゃないんだ!」
そう、僕が死んでも、あの女は幸せになることはない。
その事実だけが、僕の救いだった。
それなのに……
――続く。
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