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『夏の日のEDEN』side♥蓮
side♥蓮
青い空、鮮やかな海…そして、太陽。
キラキラと輝いて、全てが眩くて……
またこの夢、か。
幼い笑い声は耳に届くのに、眩しくて見えないんだ。
――俺と、レイの…
「…ちゃん、お兄ちゃん」
「………レ…イ?」
「早く起きて?泳ごう?」
誰の目も気にせずに普通の恋人でいたい。そんな君の願いを叶える為の、三泊四日の海外旅行。
空も海もまるで、夢そのままの景色で…
都合の良すぎる、夢。
何度か見た、夢。
肝心なところで逃げる、夢。
顔を見ることの出来ない――夢。
「早く起きよ~よ、ね?」
俺の気なんて知らずに、無邪気な笑顔の君がフイに憎らしく感じて…
「ヤダ」
「どして?…何かご機嫌斜め?」
尋ねられて気付く、己の思い。
「……っぽいね」
あぁ、そうだ。
これは俺の『夢』なんだ。
――目を開けたまま見る『夢』。
だから、こんなにも鮮やかに映るんだ。
「お兄ちゃんって本当に寝起き悪いよね?」
「寝起きなせいじゃない」
「……私?何もしてないもん!」
君のせいだ。
君が何もしないから。
何も望まないから……夢ばかり鮮やかになるんだ。
「俺、限界みたいなんだけど?」
「限っ……だって昨日あんなに…」
そんな話じゃない、全然足りない。
「だから、昨日も…っ!」
抵抗なんて出来ない癖にNOばかり言う唇を塞いだ。
足りないと…ソレを望んでいたのは、いつからなのだろう?
「……楽園ってさ、どんな所だと思う?」
「暖かくてキラキラで、南の島かな」
「ここだってそうじゃん?」
誰にも邪魔されたくなくて選んだ場所だけれど。
「レイにとっては楽園?」
「そうだけど…お兄ちゃんは違うの?」
こんなのが楽園だなんて、ちっぽけすぎるだろ?
「どうかな?」
「ズル~い、また私だけ」
ズルいのは…君。
「――全てが許される場所」
いつまでもソレを、欲しがってくれないから。
「意味、解る?」
「解んな…」
「好都合じゃん」
もう有無は言わせない、答えなんて待っていられない。
「今度はさ?――俺のワガママ、叶えてよ」
楽園には俺が連れて行くから。
夢の続きを、君が見せて?
――あの輝く、小さな笑顔を。
夏の日のEDEN~end.
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