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茜の想い2(まだ続きます)
そこにいた人物は、それはもう怪しい人だった。
長い髪に黒いスーツ、おあつらえ向きにハットとサングラス。
思わず身構える私に向かって、その男はやけに陽気な口調で話し始めた。
「あー、怖がらないで……って言っても無理だよね。大丈夫、怪しい者じゃありません」
「いえ……あなたより怪しい人見たこと無いです。待ってください、警察呼びますから」
「あ、ちょっと待って! 警察はまずい!」
怪しくないのに警察はまずいとは、一体どういうわけだろう。
携帯電話を取り出す私に、男は慌てたように口を開いた。
「ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ。君は今、幸せかい?」
「はい?」
いきなり語られた言葉に、私は大いに戸惑う。
新手の宗教か何かだろうか……。
「例えば、もし君が今感じてる幸せが全部まやかしだったとしたら、どうする? 耐えられる?」
男の言葉に、私は思わず黙りこくってしまう。
この男は、一体何を知っているというのだろう。
しかし、何故だろう。
目の前にいる、あからさまに怪しい男の言葉は、私の胸に大きな不安の影を落としていた。
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