第零章・始まりの話

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今日の掃除はいつものように外じゃなくて、何故かめったに上がらせて貰えない社殿だった。 まぁ俺は、珍しい事もあるなぁ、とかそんな事を考えながら普通(俺の基準だが)に掃除を終わらせた。 じっちゃんに声を掛け、次の仕事を聞くと、地鎮祭やら神事やらの準備をしながら曖昧な返事が返ってきたので、とりあえず待機というか、休憩することに。 ……うん、暇だ。 何か面白そうなもんは--ん? 「そういや、ここの御神体って見たこと無いな」 ふと俺は思った。 確かに、生まれてから一度も見たことが無い。 何でだろうな?今まで気にも留めた事なかったけど、考えたら不思議だ。 「探してみるか……暇だし」 この日に限ってそんな事を考えた俺は、御神体を探して社殿を歩いた。 しかし、いくら探してみても御神体なんて物は見当たらない。 「……なんで無いんだ?」 くまなく探したのに見つからず、何だか精神的に疲れて、ため息と共に視線を下げると 「ん?」 床板にくぼみがあった。 それは、普段なら気が付かないような感じの、本当に小さなくぼみ。 しゃがんでよく見ると、どうやら指を引っ掛けるため物らしい。 こんなんアレだ、芸人の押すな押すなと同じで、開けてくださいって言ってるようなもんだよな ? そういう言い訳を、自分に言い聞かせる。 「よっ、と」 俺はくぼみに手を掛けて、床板を持ち上げる。 床板は結構簡単に持ち上がって、俺はその下を覗きこんだ。
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