第零章・始まりの話

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耳障りな軋んだ音をたてる扉を押し開けて、俺は奥に進む。 暗順応しかけた目を凝らすと、広がった視界の先にあるものを見つけた。 「刀?……これが、御剣神社の御神体なのか?」 俺が見つけたもの、それは御神体と思われる一振りの刀だった。 とはいっても、他にそれらしい物もなく、直感でそう感じただけだけど。 しかし同時に、その刀には一般にある御神体とは何か違う感覚を覚えた。 神々しいと言うよりは、むしろ禍々しさを覚える。 何かを封じるために何重にも貼られた札が、さらに禍々しさを強調していた。 (これに触れてはいけない) 直感的に、本能的に、頭でそう感じた。 けれども、体が勝手に動き、無意識の内に御神刀に触れようとしてしてしまう。 『取り憑かれた様に』 たまに聞くこの言葉を、俺は信じていなかった。 責任のがれの、単なる言い訳と思っていた。 でも、当事者となった今は分かる。 自分でもわからない、この気持ち悪さ。 片方の手は鞘を掴み、柄を掴んだ手がゆっくりと御神刀を引き抜く。 (止めろ!) いくら頭で叫んでも、体は一切言うことを聞かない。 まるで、何か見えない糸に操られてるかのように。 俺の背中をぞくりと悪寒が奔る。 image=192519015.jpg
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