『 運命的な出会い 』

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忘れもしません、間違いなくあの日でしたよ、私は乳首にニガヨモギを塗りましてね、ハト小屋の壁の傍で日向に座っておりました。 旦那様と奥様はマンチュアにおいでで―――ええ、記憶力はちゃんとしてますよ――そう、お嬢様は私の乳首のニガヨモギを舐めて、苦かったのでしょう、ほんとに可愛い、むずかりなさって、私の乳首と喧嘩騒ぎ。 その時ですよ、ハト小屋がガタガタっときて、それで一目散に逃げ出して。 あれからもう十一年になるんですからねぇ』と言った調子で、話がなかなか途切れません。 ようやく口を出す機会をとらえて、 母親は言いました。
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